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60歳を過ぎたら、たんぱく質中心の食事を。栄養管理士・岩崎さんが語る「食」の基本
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60歳を過ぎたら、たんぱく質中心の食事を。栄養管理士・岩崎さんが語る「食」の基本

メタボリック・シンドローム対策やスタイルアップのため……と、糖質オフやダイエットを習慣にしている方も多いですが、「60代以降は、ダイエットの知識は一旦リセット。たんぱく質を中心にしっかり栄養を摂って、動ける身体づくりを行うことが大切です」と料理研究家・管理栄養士の岩崎さんは語ります。

筋肉づくりや健康的な肌、髪のために大切、ということは広く知られているたんぱく質。しかし実は身体の機能全体を司るといっても過言ではない、大切な栄養素です。そのたんぱく質を中心に、60代以降の食生活についてお話を伺います。

岩崎啓子さん

岩崎啓子さん

料理研究家のアシスタントや保健所での栄養指導などを経て、料理研究家・管理栄養士として独立。栄養学を生かし、簡単に作れて美味しくからだにやさしい料理を提案。雑誌や著書などで幅広く活躍している。著書に『夫婦ふたりにぴったりの60歳からのたんぱく質しっかりごはん』(宝島社)『親に届ける宅配ごはん(親の元気を支えるシリーズ)』『一日1600kcalの健康献立集(女子栄養大学出版部)』など。

1.60代からの食生活は「たんぱく質ファースト」に!

――岩崎さんは「60歳からはたんぱく質をより意識的に摂るべき」とお話されていますが、それはなぜなのでしょう?

50代までは多少無理をしても元気でいられますが、60歳になるとそこからの健康寿命を延ばすための土台づくりを意識的に行うことが大切です。それには、たんぱく質をしっかり摂ることが必要なんです。

人間の身体は約70%が水分で、たんぱく質が約20%、その他の成分が約10%。筋肉や肌、髪はもちろん、血液や骨、脳や神経細胞、ホルモンや消化酵素まで、重要な部位の全てにたんぱく質が関わっています。

しかも、60代を超えると、20代の頃と比べると消化吸収能力が80%くらいになってしまいます。若い頃と同じ量を食べていても、実は不足していた――ということも起こるんです。

60代からの食生活は「たんぱく質ファースト」に!

――たんぱく質が不足すると、身体にどのような影響があるのでしょう。

まずは、肌や髪、爪にハリや潤いがなくなります。免疫力が低下して疲れやすくなったり、脳の神経細胞が栄養不足になることで、不眠やうつになったりする危険性もあるといわれています。また、消化酵素が減少することで、たんぱく質をはじめとする栄養の吸収がさらに悪くなる、という悪循環に陥ることも。

そうしてたんぱく質が不足した状態が長く続くと、筋力が低下して動くのが億劫になり、健康寿命への悪影響が大きくなります。

――岩崎さんがご覧になっている中で、中高年の食生活でよくある失敗例はありますか?

男女とも30代から様々な生理的機能や感覚機能が低下していき、40~50代以降はそれらが顕著になってきます。代謝などの低下で、身体の変化を感じる人もいますよね。それで、太らないように…とカロリー控えめ・糖質オフの食生活を始める方も多いようです。血糖値を上げづらくするベジタブルファーストの食事を意識されている方も多いですね。

しかし、吸収力が低くなる60代以降は、カロリーや栄養素をしっかりと摂ることが大切です。また、ベジタブルファーストの食事は、食が細くなる60代以降には野菜で満腹になり必要な栄養素が不足する、ということも起こります。

子どもが独立して家族の人数が減り、スーパーの惣菜などで食事を済ませてしまうというご夫婦も多いですね。そのため、惣菜に多い揚げ物油でお腹いっぱいになってしまうことも。

お惣菜を利用すること自体は悪くありません。ただ、お惣菜の選び方に注意したいところです。出来れば揚げ物ではなく、焼き魚や焼き肉など、たんぱく質の多いお惣菜をチョイスしましょう。

「どうしても今日は揚げ物が食べたい!」なんてときは、野菜で出来たかき揚げではなく、鶏肉のから揚げやアジフライを選んで。「いやいや、野菜のかき揚げが食べたいんだ」という場合は、副菜にとうふや納豆などのたんぱく質を追加するといいですね。

60代からの食生活は「たんぱく質ファースト」に!

60代からはたんぱく質ファーストで食べるのがおすすめです。先に食べるから吸収が良くなるわけではないですが、最初に食べることで必要量がしっかり摂れますよね。

毎日しっかり手作りするのが難しい方は無理をする必要はないですが、たんぱく質が不足したら翌日にはしっかり摂るなど、調整すると良いと思います。

2.たんぱく質は多くの種類を組み合わせて摂るのがコツ

――では、具体的に1日何グラムのたんぱく質を摂れば良いのでしょう。男性、女性での摂取量の差はありますか?

一般的には、男性は1日60g、女性は50gといわれています。ただ、体格によっても変わってくるので、男女関係なく、ご自身の体重×1.0g〜1.2gを目安にしてみてください。

また、1日60gだとしても、「一食に60g食べればそれ以外はたんぱく質ナシで良い」ということではありません。一気に摂ろうとしても吸収しづらいですし、1種類の食材から摂るよりいろいろな食材から摂る方が良いので、1日3食20gずつ、というように分けてこまめに摂取するのがおすすめです。

たんぱく質は多くの種類を組み合わせて摂るのがコツ

――たとえば、お肉を100g食べれば、その100gがそのままたんぱく質の量になるわけではないんですよね?

その通りです。たとえば、鳥もも肉(100g)のたんぱく質量は約17g、牛赤身だと約16g、脂身の多い豚バラ肉だと約13gです。

お魚ですと、鮭の切り身一切れ(100g)のたんぱく質は約17g。玉子1個のたんぱく質は約6g、納豆1パック(40g)は約6gです。

――鳥もも肉100gに約17gと聞くと、1日60gは少しハードルが高いように感じてしまいます。

たんぱく質の含まれる食材というと、肉・魚・卵・乳製品・大豆製品のイメージが強いかもしれませんね。でも、実は主食や野菜にも含まれているんですよ。

ごはん1膳(180g)には約3.6g、6枚切りの食パンには約4.4gのたんぱく質が含まれています。

野菜だと、ブロッコリー(100gあたり3.8g)や枝豆(100gあたり10.3g)などに豊富に含まれています。

極端な話、ご飯1膳と鮭の切り身で一食20gは達成できます。もちろん、プラスアルファでいろんな食材を食べてほしいですけどね。

――ご飯にも含まれているんですね! 少しハードルが下がりました。いろいろな食材からたんぱく質を摂った方が良いのは、なぜですか?

肉類ばかり摂っているとコレステロール過多になってしまいます。魚を食べればDHAなどの良質な油が摂れるし、大豆製品や主食には植物性たんぱく質が含まれているので、また違う成分が摂取できるんです。

たんぱく質の吸収、合成を促す成分として、ビタミンB2、B6は一緒に摂るとより良いのですが、それ以外の栄養素も互いに作用し合って働くので、さまざまな食品を食べる方が体内での働きが良くなります。

――では、1日の献立は具体的にどのように考えたら良いですか?

主食、主菜、副菜、という形をベースに3食とれば、いつの間にかしっかり摂れているものですよ。気負わず、まずは食材のバリエーションを意識してみて。

1日の献立の具体的

3.偏りに気をつけて。60代以降に意識したい、食事の注意点

――60代以降は食が細くなるから1日2食、という方も多いですが、やはり3食食べる方が良いのでしょうか。

食事には、栄養を摂るだけでなく、体内時計を整えるという効果もあります。

特に、起きて1時間以内に朝食を食べることで身体を目覚めさせ、体内時計をリセットすることが大切です。ですので、朝食と夕食という2食ならまだ良いと思います。

ただ食が細くなるからこそ、1回に食べられる量も少なくなるので、3食食べる方が良いと思いますね。2食でたんぱく質の必要量を摂るのは、どうしても難しくなってきますので。

1食に食べる量が少ない人は、食事の回数を増やしたり、おやつにヨーグルトやチーズ、練り製品、プリンなどを食べたりするのも良いと思います。

――献立を作る上で、注意すべきことはありますか?

バナナダイエットやオートミールダイエットなど、ひとつの食材を集中的に食べるようなダイエットは、栄養素が偏るので避けましょう。たんぱく質が大事だからといって、それだけに偏るのも、もちろんダメですよ。

副菜の野菜はなるべく色の濃いものを選び、彩り豊かにすることを心がけると、栄養素の偏りを防ぎやすく、見た目にも食欲がわくのでおすすめです。

たんぱく質をしっかり摂りながらバランス良くいろいろなものを食べ、身体を動かすことが、これからの健康をつくる土台になるはずです。

※岩崎啓子さんの「崎」の字は、正しくは「たつさき」です。

(取材・執筆協力=江尻亜由子 撮影=栃久保誠 編集=モリヤワオン/ノオト)